2021年6月13日日曜日

脱炭素は経済戦争? 本気になる世界

脱炭素や環境保護に関してのニュースが急に多くなりましたね。特にバイデン大統領が当選してから、更に多くなった気がします。過去にも環境保護が世界のテーマになったことがありました。しかし、環境保護はビジネスの中心になることは無かった気がします。今回も同様でしょうか?。

僕は今回の世界各国は本気で脱炭素・環境保護を実践してくると思います。その理由を書いてみました。【キャンデト茶】


国際的な環境対策の根底にあるのが2015年に合意したパリ協定です。

パリ協定のポイントは、「産業革命以降の温度上昇を1.5度以内に抑えるため、2050年までカーボンニュートラルを実現。」で表現されます。2017年8月時点で世界の温室効果ガス排出量の約86%、159の国・地域でパリ協定が締結されています。では、カーボンニュートラルとは何かを確認します。


カーボンニュートラルとは 

気候中立とも表現され、ライフサイクル全体で見たときに、二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量とがプラスマイナスゼロの状態になることを指す。CO2排出を完全にゼロには難しいため、排出せざるを得なかった分は同じ量を「吸収」または「除去」することで、差し引きゼロ、正味ゼロ(ネットゼロ)を目指しましょう、ということです。このために、まずは排出する温室効果ガスの総量を大幅に削減することが大前提となります。以下の図の赤いエリアがカーボンニュートラルに賛同している国と地域です。そして、CO2排出量を低減するための施策が炭素税の導入です。



炭素税とは

化石燃料に炭素の含有量に応じてかける税金を示します。

国内では2012年から炭素税の一種としてCO2排出量に応じて原油やガスなどの化石燃料の輸入業者らに課税する地球温暖化対策税(温対税):289[円/t]を導入しています。しかし、スウェーデンの約14,400[円/t]、フランス約5,500[円/t]、デンマーク約3,000[円/t]など欧州と比べて税率が桁違いに低く、脱炭素の同意付けになりません。

国内産業の脱炭素を促す炭素税ですが、炭素税を未導入国の産業に優位へ働く効果も生みます。これでは自国の産業を潰しかねない。

炭素税では世界は動きません。議論はここからが本番です。喜ばれるギフトに


以下の重要な合意がありました。

2020年7月に欧州連合(EU)首脳会議で、炭素国境調整措置(国際炭素税)の導入やEU域内排出量取引制度の拡充などで償還財源を賄う「復興基金」の設置に合意した。

国境調整措置とは輸入品に対してその製造に伴うCO2排出量に見合う炭素税を輸入時点で賦課したり、輸出時に炭素税を減免したりすることです。これはCO2を巻き散らしてる国の製品は高い関税を掛けますよって宣言です。当然、中国などを意識した発言と予想されます。エステ体験【エルセーヌ】


某ベストセラーでも解説されましたが、

仕事は優秀で生産性が高く、賃金が安い労働者へ流れています。先進国から発展途上国へ。そして先進国では、生産性の低い高い賃金の労働者が仕事に焙れ、格差社会が発展しています。

長年、中国を中心とした生産性の高い低賃金労働者の生産品に、生産性の低い先進国労働者が仕事を奪われる状態でした。先進国でも生産性の高い人材は高付加価値な製品を生産して、適切な賃金を得られました。しかし、国内の労働者は、生産性の高い人材ばかりではありません。そして、生産性の低い高賃金な労働者も参政権を持っており、政治家は幸せにする国民の数を最大化させる義務があります。政治家は彼ら(生産性の低い高賃金な労働者?)の為にも動きます。

この動きがトランプのAmerica Firstでした。しかし、動機が経済的な論理性を欠いているので、巨大企業の賛同が得られませんでした。しかし、今回は違います。環境保護という論理性を持って先進国が生産性が低く高賃金な労働者を保護できます。更に国境調整措置という経済的な論理性も用意される予定です。ここで世界の国別CO2排出割合を確認しましょう。ライトプラン 詳細はこちら




世界の国別CO2排出割合から分かるように、中国が世界CO2排出量の28%を放出しています。そして、中国はパリ協定に参加しておりません。


ここからがCO2削減をお題目にした経済戦争の始まりと感じてます。

現在のCO2排出状況が継続している状況で、パリ協定参加国で国境調整措置が発動されたらどうなるか?https://business.xserver.ne.jp/

最大CO2排出国の中国が断トツで国境調整措置の大きな影響を受けると予想されます。中国の主要な輸出相手国は米国(シェア19%)、日本(同6%)、ドイツ(同3.1%)の合計で28.1%となります。米国・日本・ドイツはパリ協定に参加しています。総輸出量の28.1%に莫大な国境調整措置を加えられると、中国にとって大きな打撃でしょう。そして、国境調整措置の高い関税を嫌って、中国の安い製品がパリ協定参加国以外に溢れ出すと、その国の物価を超デフレに追い込みます。その国は深刻な不況に見舞われるでしょう。見方によれば、先進国が環境保護のもとに自国産業を保護する経済戦争と見ることもできます。世界各国は輸出競争力を守り経済戦争を勝ち抜くため、カーボンニュートラルを実現すると予想されます。

早速、中国は動き出します。

中国は2020年9月、国連総会でのビデオ演説で「2060年までにカーボンニュートラルの実現を目指す」と宣言した。投資銀行大手の中国国際金融は、今後40年で1,000兆円を投資し、国内の太陽光発電容量を40倍にすると予想。

そして、IEA(国際エネルギー機関)によると2050年カーボンニュートラルの実現には世界で8,000兆円必要との試算もあり、莫大な市場が生まれると予想される。ムームードメイン

今回の経済戦争のポイントは国境調整措置です。経済戦争を勝ち抜くには、日本の輸出品に国境調整措置で高い関税を掛けられることを阻止する必要があります。そのためには輸出品を生産するための電力の脱炭素が不可欠です。素晴らしく脱炭素効果の高い輸出品を生産しても、炭素を多く出した発電所の電力で生産すると国境調整措置の対象になる可能性があるからです。まずは発電方式毎のCO2排出量を把握するために、各種電源別のライフサイクルCO2排出量を確認してみましょう。

石炭火力は太陽光発電の30倍、風力の50倍、原子力の70倍のCO2を排出します。そこで、世界各国の電源構成を見てみましょう。




              欧州の発電電力比率




              米国の発電電力比率




             中国の発電電力比率


日本はCO2を多く出す石炭火力発電の高比率から、同じ輸出品を生産すると日本は欧米に国境調整措置で大きな関税を加えられる可能性が高いです。そして日本よりCO2を多く出している中国は、更に深刻ですね。現状が続き、国境調整措置が導入されると仮定します。日本企業の論理では輸出品の工場を欧米に移設するでしょう。日本国内の雇用が激減し、不況が訪れます。これを政府は阻止しなければなりません。そのために、カーボンニュートラルは政府は本気になって実現するでしょう。


日本でのカーボンニュートラル実現手段は次の表で、経済産業省が発表しています。まず、2030年には2018年に比べて25%のCO2を削減を目指します。


電力分野での方策としては、①洋上風力、②燃料アンモニア、③水素産業、④原子力 で段階的にカーボンニュートラルを実現する狙いです。


電力分野以外では、①EV・FCV・次世代電池、②省エネ半導体、③次世代型太陽光発電(ペロブスカイト)の推進でカーボンニュートラルを実現する計画をです。

※参照:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略


過去に何度もCO2削減や温暖化対策が叫ばれてきましたが、僕には他人事の感覚でいました。しかし、今回の日本政府は本気になってカーボンニュートラルを実現しに来るでしょう。日本国民の雇用を守るために。そして、世界中が国民の雇用を守るためのカーボンニュートラルを実現しに来るでしょう。

この流れで気候変動サミットが2021年4月21~22日に開催されました。そこで以下の各国目標が示されました。

国・地域CO2削減目標基準年従来目標
日本46%201326%
米国50~52%200526~28%
EU55%1990
英国78%1990


気になる政策としては、

・国や自治体が作る公共建築物の太陽光発電を原則設置

・改正建築物省エネ法の対象を拡大し、延べ床面積300㎡以上の新築ビル、

 商業施設、新築住宅にも適用。補助金の検討。

などが挙げられる。今後の新たな政策に注目していきましょう。

そして、気になるのは少しづつ聞こえてくる原発再稼働へ向けたニュース。

この動きは巨大な資金の動きに繋がり、投資の大きなチャンスが生まれると思っています。僕はそのチャンスを掴みたい。そのため継続的に本件を注視していきます。


今回の論理は国境調整措置の導入が前提になっています。では現実に国境調整措置は導入されるのか?実は、7月にEUで提案される予定です。内容は「鉄やセメントをEU外から輸入すると、EUの排出量取引価格と同水準の(6,000円/t)の税をEUに支払う」提案となっており、議論が進む予定です。

このように世界は脱炭素を実現するための動議付けが着実に行われております。これらの動向を見極めて行きたいと思います。